厚生労働省は3 日、マイナ保険証のスマホ搭載のスケジュールを社会保障審議会の医療保険部会に示した。マイナ保険証のスマホ対応機能を9 月ごろから全ての医療機関に開放し、環境を整備できた医療機関から順次運用を始める。
マイナ保険証の利用促進策の一環で、患者が医療機関にマイナカードを持参しなくても外来診療を受けられるようにする。ただ、厚労省は「全医療機関に導入を義務付けるものではない」としている。
本格的な運用開始に先立ち、厚労省は公的病院などの医療機関や薬局計10 カ所程度でスマホ搭載機能の実証事業を行い、医療機関が機器を設定する際に分かりにくい点がないかや、“スマホ保険証”で資格確認を行う時にエラーが起きて窓口が混乱しないかなどを検証する。
スマホ保険証に搭載する電子証明書を医療機関が読み取るには従来のカードリーダーに加え、外付けの「汎用カードリーダー」を新たに購入する必要があり、厚労省の担当者は医療保険部会終了後の記者説明で、導入コストへの支援として「何かしらやれることがないかを検討中」と話した。
厚労省はまた、マイナカードと診察券の一体化を進めるため、医療機関のレセコン改修などのコストを引き続き補助する方針。マイナカードと診察券を一体化することで「患者はマイナカード1 枚で保険証と診察券の受け付けが可能になる」としている。
マイナ保険証の全国ベースでの利用率は2 月現在、26.62%と伸び悩んでいて、医療保険部会の委員からは、スマホ保険証の普及促進を求める意見が相次いだ。
佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)は「特に現役世代はスマホ保険証を基本として考えるべきだ」と述べ、全医療機関に導入を義務付けることを含め、普及を促すよう訴えた。
城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、医療機関によってスマホ保険証の導入にばらつきが生じることが予想されるため、患者が初めての医療機関を受診する際は、スマホだけでなくマイナ保険証や紙の保険証を持参することを呼び掛けるよう国に求めた。
厚生労働省は、2025 年度に行う医療施設等経営強化緊急支援事業の実施要綱を都道府県に通知した。
そのうちの賃上げのための生産性向上への支援は、24 年4 月1日-26 年3 月31 日に行う業務効率化が対象で、24 年度に支給金を受けた医療機関や訪問看護ステーションは対象外にする。
ただ、厚労省では、24 年度に事業を申請したケースはないとみている。
25 年度の事業は前年度の予算を繰り越して行う。実施要綱の通知は1 日付で、以下などのメニューごとに25 年度事業の内容や支給額、留意事項などを示した。
▼生産性向上・職場環境整備等支援 ▼病床数適正化支援
そのうち生産性向上・職場環境整備等支援は、ベースアップ評価料を3 月末時点で届け出ている病院や診療所、訪問看護ステーションが、24 年4 月1日から26 年3 月31 日までに行う業務効率化や賃上げの経費を支援する。
生産性向上は、タブレット端末・離床センサー・インカム・ウェブ会議設備・床拭きロボット・監視カメラなどICT 機器の導入による業務の効率化や、医師事務作業補助者・看護補助者の配置などタスク・シフトやタスク・シェアによる業務効率化、職員の賃上げの経費が対象。
病院と有床診療所には許可病床1 床当たり4 万円、4 床以下の有床診と無床診療所、訪問看護ステーションには1 カ所当たり18 万円を支給する。
医療機関や訪問看護ステーションから報告があった申請内容が事業の目的に明らかに合致していないと認められたり、申請内容を偽るなど不正な手段で給付金の支給を受けたと認められたりする場合は、給付金の返還を求める。
一方、病床数適正化支援は24 年12 月17 日-25 年9 月30 日に病床を削減する病院・診療所への支援として、削減病床当たり410.4 万円を支給する。介護医療院など介護保険施設に転換するための減床や、有床診療所から無床診療所に変更する場合は対象にしない。
厚労省は、生産性向上・職場環境整備等支援事業に関するQ&Aを3 月26 日付で追記・修正し、ICT 機器の導入による業務効率化の経費として支給金18 万円が概算で交付された場合の取り扱いを新たに例示した。
それによると、機器の導入に実際は15 万円しか使用せず、残り3 万円を職員のさらなる賃上げとして一時金などに充てた場合、国としては、改めて申請しなくても実績報告に報告してもらうことで足りるとする解釈を示した。
また、病院・診療所が訪問看護ステーションとして「みなし指定」を受け、ステーションコードが交付されている場合は「病院・診療所」と「訪問看護ステーション」としてそれぞれ申請できる。
一方、訪問看護ステーションのサテライト施設は支援の対象にならない。
福祉医療機構は4 日、209 病院の44.5%が2024 年度に医業利益の減益を見込んでいるとする調査結果を公表した。15%以上の減益を見込んでいる病院が21.1%を占めた。
これに対し、増益を見込んでいるのは22.0%、横ばいは33.5%だった。病院や医療法人の経営実態を把握するため福祉医療機構が四半期ごとに行っている病院経営動向調査の結果。
今回は、機構にモニター登録している366 病院と237 の医療法人を対象に3 月3-24 日に実施し、216 病院(59.0%)と145 法人(61.2%)が有効回答した。
209 病院の22.0%が24 年度に増収を見込んでいたが、コスト増の見込みの病院が54.1%と過半数を占めた。病院のタイプ別では、「精神科」(精神病床80%以上)は39 病院の46.2%が減益になる見込みだと答えた。
「療養型」(療養病床50%超)は42 病院の45.2%、一般病院(一般病床50%超)のうち200 床以上は45 病院の44.4%、200 床未満は83 病院の43.4%が減収を見込んでいた。
Q.当院の方向性を定めるために必要な経営戦略を教えてください。
経営戦略とは、組織活動の基本的方向を環境との関わりにおいて示すものであり、組織の諸活動の基本的状況の選択と、諸活動の組み合わせに関する基本方針の決定を行うものです。
つまり経営戦略は、病医院の方向性を定める設計図として2つの要素を持っており、病医院ビジョンを実現する方向付けの機能を果たすものといえます。
❶病医院の諸活動全体を取り巻く基本的枠組みの選択
例)病医院の事業分野(ドメイン)の選択、病医院の保有能力(施設・機器類、人員)の決定
❷病医院の諸活動の組み合わせ、重み付けの決定
例)今年の重要施策は、病院機能評価認定取得と在宅医療の運用開始すること 等
また、経営戦略は、病医院活動全体に及ぼす影響や深さの程度により、基本戦略と行動戦略に区分することができます。
❶基本戦略:病医院活動に広範な影響を及ぼし、またその成果が病医院のパフォーマンスに深く影響するような戦略的決定のことをいいます。
❷行動戦略:基本戦略を実行に移すために必要なプランのことを指します。
経営戦略とは、予測が難しい先行きの不透明な病医院の経営環境の中で、自院の強みを活かし弱みを克服しながら、どのように事業を発展させていくか、といった大きな筋道や方向性を決定するものです。
それに対して経営戦術とは、経営戦略の下位概念で、それを実現するための具体的な個々の活動方法や手段をいいます。「ビジョンなき戦略はありえず、戦略なくして戦術はありえない」という文言は、病医院が将来どういった姿になりたいのかを明確にしていなければ、何をすべきかを決定することはできないということを意味しています。
経営戦略を決定するためには、基軸となるべき明確な経営理念と病医院ビジョンの存在は欠くことはできません。また、大きな道筋が示されていなければ、具体的にどういった手を打っていくべきかといった戦術を打ち出すこともできないのです。
経営戦略とは、病医院活動の基本設計図であり、その経営戦略実現のための具体的方法と行動が経営戦術なのです。
Q.経営戦略の根幹となる経営ビジョンの確立のために必要な取り組み、プロセスとは?
経営ビジョンの明確化には、次のようなプロセスが必要です。
❶経営ビジョンの確立、あるいは見直しの前段階として、自院の歴史を振り返る
❶医業収入と経常利益、患者数等経営数値の推移
❷病医院の特徴
❸病医院内外の重要な出来事
❷過去の経営活動の推移を3~5年をひとつのスパンに区切って分析
一般に病医院は、以下のような特質を持つ期間を経て成長するとされます。
❶開業期 ⇒ ❷基盤確立期 ⇒ ❸幹部育成期 ⇒ ❹管理制度運営期 ⇒ ❺再活性期
❸新しい経営理念、病医院ビジョンを掲げる必要性について考察
自院の変遷を分析していく中で、医業活動の最高規範である病医院理念を見直す必要性が考えられます。
その場合には、自院の理念について、現状と比較した考察が求められます。これは理事長、あるいは院長のみが行うべきものです。
❶自分の過去を振り返り、人生観、社会観、価値観を整理する
❷医療行政の未来を見通し、自院の方向性を整理する
❸病医院を経営する上で、最も重要だと思われることを整理する
❹診療圏の状況を考慮し、今後の病医院経営にとって最も重要と思われることを整理する
❺院内に公表し、病医院理念の徹底化を図る
病医院理念の公表の方法としては、玄関や待合室、会議室など院内の見やすい場所へ掲示するほか、院内誌への掲載、名札・名刺・診察券への印刷、記念行事におけるアナウンス機会の利用、HP掲載などが考えられます。
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