政府は11日、2024年版の過労死等防止対策白書を閣議決定した。
白書では、労災認定された医療従事者の過労死などのうち、精神障害が認められた事案について分析した結果を報告。医師の認定事案は10-15年度の6年間で10件だったのに対し、16-20年度は5年間で21件に増加。看護師では10年度以降10-20件前後で推移していたのが20年度は42件と、前年度から26件増加していた。
20年度に看護師の過労死などの労災認定が急増したことについて、厚生労働省の担当者は「新型コロナウイルス感染症の流行拡大が関係している可能性も考えられる」と話している。
11日に閣議決定された過労死等防止対策白書では、過労死や過労自殺を防ぐための対策をまとめた過労死防止大綱に基づき、過労死などの実態把握に向けた調査を行う重点業種の1つに位置付けられている医療業界の分析結果を報告した。
精神障害が認められた医療従事者の10-20年度の労災認定事案を年齢階層別に見ると、医師は30歳代が14件(45.2%)と最も多く、29歳以下が8件(25.8%)、40歳代が7件(22.6%)だった。看護師も30歳代が最多で詳細は以下の通り。
▼30歳代が57件(29.5%) ▼40歳代が55件(28.5%)
▼29歳以下が45件(23.3%) ▼50歳代が29件(15.0%) など
12-20年度の事案について精神障害の発症に関わる出来事を調査した結果を見ると、医師では「極度の長時間労働」(6件)や、「仕事の内容・仕事量に大きな変化を生じさせる出来事」(10件)などが目立った。看護師は以下の通り。
▼「悲惨な事故や災害の体験、目撃」(75件)
▼「重度の病気やけがをした」(25件)
▼「ひどい嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた」(20件) など
厚労省の担当者は、「長時間労働の是正に加え、メンタルヘルス対策やハラスメント防止対策の必要性が一層増してきている」と強調。ハラスメントの報告が多い看護師に対しては、23年10月に改定した「看護師等の確保に関する基本的な指針」で示されている当人が安心して相談できる窓口の設置やハラスメントを防止する重要性を周知、啓発する研修の実施などのハラスメント対策を推進していく考えを示した。
日本介護医療院協会は10 日、全国の169 の介護医療院のうち43.8%が6 月現在、単独で黒字だったとする調査結果を公表した。
介護医療院の類型別では、「Ⅰ型」は125 施設の44.8%、「Ⅱ型」は42 施設の42.9%が単独で黒字だった。調査結果は、協会の鈴木龍太会長が日本慢性期医療協会の記者会見に参加して明らかにした。
経営の状況の質問に単独で黒字と答えたⅡ型の割合が1年前の調査より特に高く、鈴木氏は、介護報酬の4 月の改定で経営状態が改善した可能性を指摘した。
調査は、協会の非会員を含め2023 年12 月時点で開設されていた770 の介護医療院全てを対象に実施し、介護医療院の経営状況や人材が充足しているかなどを尋ね、174 施設から回答があった(回答率22.6%)。
経営状況の質問には169 施設が回答し、「単独では黒字」が74 施設(169 施設の43.8%)、病院に併設されていて単独での経営状況が分からないなど「どちらともいえない」が65 施設(38.5%)、「単独では赤字」は29 施設(17.2%)などだった。
介護医療院の類型別では、重篤な身体疾患の高齢者らを受け入れる「Ⅰ型」は125 施設のうち56 施設(125 施設の44.8%)が「単独では黒字」と答え、ほかは「どちらともいえない」が50 施設(40%)、「単独では赤字」が18 施設(14.4%)などだった。
これに対し、容体が比較的安定した高齢者らを受け入れる「Ⅱ型」の42 施設は、「単独では黒字」が18 施設(42 施設の42.9%)、「どちらともいえない」が14 施設(33.3%)、「単独では赤字」が10 施設(23.8%)。
療養床の稼働率や入所者の平均要介護度を黒字と赤字の施設で比べると、Ⅰ型での稼働率は黒字(56 施設)が95.2%、赤字(18 施設)が88.1%。平均要介護度は黒字が4.29、赤字が4.20 だった。Ⅱ型の稼働率は黒字(18 施設)が93.7%、赤字(10 施設)が86.8%、平均要介護度は黒字が4.04、赤字が3.86。
I 型では、黒字と赤字施設の稼働率に7.1 ポイントの差があったが入所者の要介護度には大きな差がなく、鈴木氏は「Ⅰ型は稼働率を上げることが一番大切だ」と指摘した。
●苦労すること「介護職確保」8割
調査では、介護職が充足しているかどうかも質問し、「充足している」は173 施設のうち21施設(12.1%)にとどまった。
ほかは「ギリギリ」が81 施設(46.8%)、「不足している」は71 施設(41.0%)。166 施設のうち、外国人を採用しているのは80 施設(48.2%)で、それら以外に、採用する予定があるか採用を考えている介護医療院が17 施設(10.2%)あった。
現場で苦労していることの質問では(複数回答可)、173 施設のうち141 施設(81.5%)が「介護職確保」を挙げ、最多。ほかは、「看護師確保」が110 施設(63.6%)、「抑制ゼロ対策」が90 施設(52.0%)などの順だった。
人口減少に歯止めがかからずに閉鎖や病床削減、診療所への転換を余儀なくされる病院が増えているとして、日本医療法人協会など四病院団体協議会は、地域医療介護総合確保基金の拡充を訴える要望書を11 日、加藤勝信財務相に手渡した。
四病協の要望書は、地域医療介護総合確保基金の増額など3 点で、病院への緊急財政支援の要望書と共に加藤財務相に直接提出した。
要望書では、人口の減少に伴い医療需要が変化しても、救急・急性期医療や広域の医療に対応できる病院、高齢者救急などに対応する地域密着型の病院を確保する必要があるとして、そのために地域医療介護総合確保基金を大幅に増額するか、新たな基金を創設するよう求めた。
国が14 年度から行っている「減床補填」の単価を現在の「1 床当たり約200 万円」から増額するなど、病床機能再編に伴う支援の拡充も訴えた。
さらに、地域医療を確保するには老朽化した病院の建て替えが今後必要になるとして、病院の建て替えに伴う支援の拡充(補助単価の引き上げ)を呼び掛けた。
近年の物価高騰に伴い建築単価が年々上昇しているため、現行の補助単価は「現実から乖離している」と指摘し、実情に見合った単価が設定されるよう都道府県への周知を求めている。
遅刻・早退に対するペナルティ
Q.就業規則で「遅刻または早退を3回した場合に、1日欠勤とみなし、1日分の賃金を控除する」旨を定めていますが、問題があるでしょうか。
賃金はもともと、労働の対価(代償)として支払われるものですから、遅刻、早退などによって労務の提供がなかった時間分の賃金を支給しないこととしても、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づくもので、何ら問題はありません。
しかし、「減給の制裁」は、「労務提供がなされ、本来支給すべき賃金の一部を控除すること」ですから、次のような法律上の制限が設けられています。
❶1事案に対する減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えないこと。
❷複数事案に対して減給する場合にも、一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えないこと。
したがって、遅刻3回を欠勤1日とする取扱いは、「1事案に対する減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えないこと」という規定に違反となる可能性があります。
このようなケースで、遅刻や早退に対してペナルティを課すには、以下などを就業規則に定めることなどが考えられます。
❶遅刻または早退が3回以上になった場合には、精皆勤手当を支給しない
❷遅刻または早退(合理的理由のないもの)が3回以上に及んだときは、不就労時間の賃金を控除
するほか、平均賃金の1日分の半額を控除する)
資格取得講習参加の取扱い
Q資格を取得させるため、業務命令で講習に参加させた場合、その参加時間は労働時間に含めなければならないのでしょうか。
業務上必要な資格や免許を取るための講習を業務命令で受講させる場合は、参加時間を労働時間として扱いますが、その他についてはケースバイケースで判断します。
労働時間と認める際の基準は、以下を参考にしてください。
■業務命令の定義
事業主と労働者の間には、労働契約が締結されています。
これにより、労働者には労働の義務が、そして事業主には労働を命ずることができる業務命令権が生じます。
業務命令は、労働契約書や就業規則の内容に基づき、その労働者を管理監督する立場の人が発令することができます。
労働者は、この業務命令に従わなければなりませんが、管理監督する立場ではない人が他の労働者に自分の仕事を押し付けるようなものは、業務命令とはいえません。
また、業務命令には、日常における制服の着用など細かい事項から、残業命令、配置転換(職種変更、転勤)、在籍出向、転籍出向、出張、応援、派遣などがあり、いずれも正当な理由がない場合を除き、労働者はこれに従わなければなりません。
もし、労働者が正当な理由無く拒否するならば、事業主側は懲戒処分を科すこともあります。
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