厚生労働省は、オンライン診療を行う医療機関に都道府県への届け出を求める案を社会保障審議会の医療部会に示した。また、オンライン診療を提供する場所や患者が急変した際の体制確保などの基準を法令で定める。見直しの内容を年内に固め、年明けに召集される通常国会に医療法の改正案を提出したい考え。オンライン診療の適切な実施を促すため、厚労省が 2018 年に作った指針(通知)では、以下などを規定している。
▼オンライン診療を提供する医師と、それを受ける側の患者の所在
▼医師・患者双方の本人確認の方法
▼医師・患者間のルールに基づく「診療計画」
しかし、現在は指針の法的な位置付けが不明瞭なため、厚労省は必ずしも順守されていない とみている。また、厚労省が行った美容医療に関する保健所への聴き取りでは、医師以外がオ ンライン診療を実施していると疑われるケースが明らかになった。そのため指針の法制上の位 置付けを明確化することにした。法令で規定するオンライン診療の基準は、現在の指針をベー スに検討する。医療法の規定は自由診療の医療機関にも適用される。
厚労省はまた、オンライン診療のために開設された医師が常駐しない診療所や、オンライン診療が行われている通所介護事業所や公民館などを「特定オンライン診療受診施設」と位置付け、都道府県への届け出を設置者に義務付ける案も示した。
特定オンライン診療受診施設の設置者には、施設の運営者の配置や患者が急変した際に対面診療を行う医療機関との連携も求める。特定オンライン診療受診施設の患者にオンライン診療を行う医療機関には、施設がオンライン診療の基準に適合しているかの確認を求める。
一方、施設側には医療機関からの確認に答えることを義務付ける。
10 月 30 日の医療部会では、患者のプライバシーが確保されていない施設に都道府県が立ち入り検査を行える仕組みを求める意見などがあり、引き続き具体化する。
外科系の診療科を希望する医師が少なく、診療科間の偏在を生んでいる現状を踏まえ、厚生労働省は 10 月 30 日の有識者検討会で、外科医療の集約化や重点化で就労環境を改善し、外科医の確保を図る方針を示した。外科系は、ほかの診療科に比べて年間 1,860 時間を超える時間外や休日労働の割合が多く、体力的な負荷も大きいことから外科医療への従事を断念する医師が少なくない。
そのため厚労省は、高度な手術を担い、高い技術を有する外科医の育成を重点的に行う医療機関を集約し、機能分化を進めることで効率化を図る。これにより外科医が働きやすい環境を整備し、医師数の確保につなげる。
30 日に開催された「医師養成課程を通じた医師の偏在対策に関する検討会」で、日本消化器外科学会理事長の調憲参考人は、高度ながん手術の場合、年間の手術件数が多いほど手術後の死亡率は低く、短期の治療成績が向上すると説明。日本脳神経外科学会理事長の齊藤延人参考人も、脳腫瘍は、手術件数が多い施設ほど死亡率が低いとし、医療機関の集約化により医療の質向上が期待できると指摘した。
意見交換では、今村英仁構成員(日本医師会常任理事)が外科医療の集約化で、地方では症 例数が集まらなくなると指摘。研さんを積みたい若手医師が都市部の大きな医療機関に集中し、 地域間の偏在が拡大すると危惧した。これに対し調参考人は、「集約化を行うのはあくまでがん などの高度な手術を想定している」と回答。外科医の育成には、高度な手術だけでなく幅広い 診療経験を積む必要があるとし、地域間の医師の偏在が拡大することがないように専門研修と の兼ね合いを含めて慎重に検討を進めるべきだと強調した。
印南一路構成員(慶應義塾大名誉教授)からは、厚労省に対し「集約化の手段についてはど こで議論するのか」という質問が出た。これについて担当者は、医療提供体制に関わる内容の ため、本検討会での議論を新たな地域医療構想に関する検討会にも報告し、そこでさらなる議 論を求める考えを示した。
社会保障審議会の医療保険部会が 10 月 31 日開かれ、厚生労働省は、病院・診療所・薬局ごとや、都道府県ごとに集計したマイナ保険証の 9 月の利用率を示した。それによると、医科診療所の利用率は最高の福井でも 17.39%にとどまり、全都道府県で 20%を割り込んだ。医科診療所の利用率が最も低かったのは沖縄の 6.42%。沖縄では、病院・歯科診療所・薬局でも利用率が最低だった。
医療保険部会の佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)はこの日、「厚労省から、保険
者における利用率の目標設定の参考として『11 月末に 50%を基本』と示されているが、直近の数字を見ても遠く及ばない」と述べた。マイナ保険証の利用率は、オンライン資格確認システムの利用件数に占めるマイナ保険証の利用件数の割合。
現行の健康保険証の新規発行を終了し、マイナ保険証に原則一本化させる 12 月 2 日まで残り 1 カ月余となり、厚労省は 9 月分の利用率の詳しい集計結果を医療保険部会に示した。
それによると、医科診療所の利用率の上位 3 は、福井のほか鹿児島 16.97%、新潟 16.83%だった。これに対し、沖縄のほか和歌山 7.80%、徳島 8.93%では低く、全都道府県で 20%に届かなかった。病院の利用率の上位 3 は富山 35.07%、栃木 34.27%、山形 34.27%で、ほかに茨城・石川・山口でも 30%を超えた。最低の沖縄は 11.11%だった。
一方、薬局の最高は島根 21.67%で、最低の沖縄は 4.75%。歯科診療所は宮崎 33.16%が最も高く、最低の沖縄は 12.88%だった。
病院・診療所・薬局ごとの全体での利用率は病院 24.10%、歯科診療所 19.41%、薬局13.70%、医科診療所 11.50%。31 日の医療保険部会では、マイナ保険証の一層の利用促進を求める意見が相次ぎ、横尾俊彦委員(佐賀県多久市長)は「マイナ保険証の登録は、基本は義務化だと政府で決めた方がいい」などと述べた。
厚労省はマイナ保険証や、マイナ保険証を持たない人に交付する「資格確認書」の 12 月 2日以降の取り扱いを引き続き周知する
資料出所:厚生労働省
患者アンケート調査実施ポイント
Q.患者アンケート調査の進め方について教えてください。
患者アンケート調査は、目標とする対象から抽出されたデータを多角的に分析し、その結果及び改善に向けた取り組みを、患者や職員にフィードバックするという流れで行います。具体的には、以下のような手順で進めます。
①目的の明示
調査実施の目的を明確にします。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
●医療提供レベルの満足度 ●患者が自院に求めているもの ●患者サービス向上のヒント
②目標設定
対象(人、場所、機関)、実施時期、回収率などに関する具体的な目標を決定します。
③調査計画策定
アンケートの具体的実施計画を立案します。決定するのは以下のような事項です。
●内部における実施、外部(コンサルタント等)に依頼するのか
●具体的実施スケジュール
●アンケート用紙の回収方法:直接ヒアリング後に回収、回収箱に投函、郵送
●費用予算の策定等
④調査方法および調査票作成
調査項目のフレームワーク(人・サービス・アメニティ)を決定します。
⑤調査の実施
⑥集計
⑦結果分析および考察
仮定の検証や統計的処理、多角的分析、並びに継続的変化の比較などを行います。
⑧フィードバック
調査結果を患者と職員に公表します。特に患者からの改善要望事項については、院内にその改善の進捗等について掲示するなど、取り組みが目で見える形にすることがポイントです。
アンケート調査票の作成
Q.入院患者用と外来患者用の調査票の作成についてポイントを教えてください。
■入院患者アンケート調査
入院患者アンケート調査票は、以下に区分されます。これらに基づき、入院患者向けのアンケート調査は、この4項目で整理すると良いでしょう
①施設整備 ②職員技能 ③患者サービス ④病院運営システム
自院までのアクセスや、玄関から待合室、診察室、病室等患者の動線に従って、アメニティについて調査をします。
特に、入院療養環境が重要なポイントとなるため、病室の広さはもちろんのこと、談話室・浴室等共用スペース、プライバシーへの配慮に問題がないか確認しましょう。
次いで、職員の対応やマナーレベルの水準を確認するため、多くの時間を接する看護職員(看護師、助手)だけでなく、職員全般の言葉遣いなど接遇面で問題がないかチェックします。
続いて、食事や病室の設備等の患者サービスを確認します。外来患者が入院することによって、普段目に付かない部分の指摘をするケースもあります。そして、情報提供を含めた入院システムについて確認するとともに自由記述欄を設け、設問以外の不満や要望を記入してもらうと、より具体的な意見・要望等を吸い上げることができます。
入院患者アンケートは、「病院にお世話になっている」という思いから、実際よりも良い評価をするなど、なかなか患者の本音が把握できない傾向があります。現実よりも高い評価結果になっているはずととらえて、対応を検討する際に考慮しなければなりません。
■外来患者アンケート調査
外来患者アンケート調査票は、①施設整備 ②職員技能 ③病院運営システムの3つに区分されます。入院患者同様、外来患者向けのアンケート調査はこの3項目で整理します。
自院へのアクセスから始まり、玄関から待合室、診察室、検査室等患者の動線を考慮し、まずアメニティについて調査をします。その後職員の対応レベル、さらに医師を含めたスタッフの対応レベルに問題がないかを確認した後、最後に診療システムがわかりやすいか、待ち時間に不満はないかなど、運営システムについて調査します。アンケート項目が大量にあると、回答・記入する患者側の負担も大きくなりますから、10項目以内に絞ると良いでしょう。また、自由記述欄を設けておき、より具体的な要望等を受け取れるようにします。
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