今週のトピック

医療行政情報

精神医療も病床機能報告、地域医療構想に位置付け

 厚生労働省は 6 日、2040 年ごろを想定した新たな地域医療構想に精神医療を位置付ける 場合の課題などを議論するプロジェクトチーム(PT)の初会合を開いた。

  精神医療の機能区分ごとに病床の必要量を地域医療構想に盛り込み、病床機能報告を求める 方針が示され、それへの異論はなかった。 

 現行の地域医療構想では「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の機能ごとに将来の必 要病床数(推計)を盛り込み、地域ごとにそれらを整備するため、厚労省は医療機関が担う機 能を病棟単位で毎年報告するよう求めている。 

 ただ、報告は一般病床や療養病床を整備している病院や診療所のみが対象で、精神病床は除 外されている。 新たな地域医療構想では、入院医療だけでなく、外来や在宅医療、介護との連携などを含む 地域の医療提供体制全体の再編を進める見通し。

  厚労省は、精神医療も含めてそれらを検討することが自然だとしていて、地域医療構想に精 神医療を位置付けるため PT を 6 日に立ち上げた。 

 その中で厚労省は、精神医療に関しても現在と将来の病床機能や診療実績を「見える化」す るため病床機能報告を医療機関に求める方針を示した。さらに、以下の方針を示した。

▼精神医療の体制確保を協議するため構想区域・協議の場を設定 

▼地域医療構想を実現するための都道府県知事の権限行使の対象に精神医療を加える 

▼外来・在宅医療の再編に精神科の医療機関や精神医療も含める 

 PT の江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)は、従来の地域医療構想調整会議では、精神医 療の分野について活発な議論を行うのは難しいため、「調整会議とは異なる協議の場が必要」だ と述べた。

 その上で、新たな「協議の場」を調整会議と連携して運用することを提案した。 北村立構成員(日本公的病院精神科協会会長)は、地域医療構想の議論を進めるに当たり、 身体合併症を伴う精神疾患への対応も検討するべきだと指摘した。

ベア評価科、地域手当下げても要件満たせば算定可

 厚生労働省は、2024 年度診療報酬改定の疑義解釈資料(その 14)を出し、同年度の人事 院勧告を踏まえて配偶者手当の段階的な廃止や地域手当の引き下げを行い、看護職員処遇改善 評価料やベースアップ評価料の対象職員の一部で賃金水準が低下しても、医療機関全体の賃金 総額などに関する評価料の要件をクリアすれば算定できるとの考え方を示した。

  疑義解釈によると、算定に当たって、医療機関全体の賃金改善の総額がそれぞれの評価料を 算定して得られる収入の総額以上となるようにする必要がある。 

 それぞれの評価料を医療機関が届け出ている場合、「賃金改善計画書」を修正して提出するこ とは必須ではないが、地方厚生局に再提出しても差し支えないとしている。 

 看護職員処遇改善評価料は、三次救急病院などに勤務する看護職員(保健師・助産師・看護 師・准看護師)の賃上げの原資として、22 年 10 月に新設された。

  一方、24 年 6 月には、看護職員のほか病院薬剤師、理学療法士など計 32 職種の賃上げを 促すため、ベースアップ評価料が新設された。 共に施設基準では、業績などに応じて変動するものを除き、賃金改善を実施する項目以外の 賃金項目の水準を低下させてはならないとされている。

  ただ、人事院は 24 年 8 月、以下などを勧告した。

▼配偶者に関する手当を 26 年度までの 2 年間で段階的に廃止する

 ▼地域手当の級地区分を 7 段階から 5 段階に再編するとともに、さいたま市や千葉市、名古 屋市、神戸市などで支給割合を引き下げる

 それを踏まえて、医療機関が配偶者手当の段階的廃止や地域手当の引き下げを行って対象職 員の一部の賃金水準が低下しても、医療機関全体の賃金総額などに関する要件をクリアすれば 看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料を算定できる。

  今回の疑義解釈資料では、24 年度の診療報酬改定で新設された「医療 DX 推進体制整備加 算」について、初診料の算定時に往診料を併せて算定する場合も算定できるとの考え方も示し た。

 一方、生活習慣病管理料Ⅰと同管理料Ⅱについては、皮下グルコース用電極の費用は別途 算定できないとしている。 

診療所の若手医師「想像以上に減」過疎地などで

 厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」が 8 日に開いた会合では、全国の診
療所に勤務する若手の男性医師(40 歳未満)が、2004 年に比べ 20 年には 4 割近く減少したとする集計結果の報告が構成員からあった。

 中でも過疎地域では 40 歳未満だけでなく、12 年ごろからは 40 歳以上の男性医師も減少していた。報告を行った検討会の高橋泰構成員(国際医療福祉大学大学院教授)は、診療所の医師が過疎地などで若手を中心に「想像以上に減っている」と指摘した。

 この集計は、高橋構成員が「医師・歯科医師・薬剤師統計」を基に行い、診療所の医師数の 04
-20 年の増減率を、医師の性別や年代(40 歳未満と 40 歳以上)、全国ベースと都市のタイプ(人口規模)別にまとめた。

 その結果、全国ベースでは「40 歳以上女性」の医師が 20 年までに大幅に増えたほか、「40
歳以上男性」もやや増えた。これに対し、40 歳未満の医師は男女を問わず減少し、「40 歳未満男性」は 4 割近く減少した。

 都市のタイプ別では、「過疎地域」(大都市と地方都市以外)の医師は、「40 歳未満女性」と「40 歳未満男性」だけでなく「40 歳以上男性」も減少していることが分かり、高橋構成員は「過疎地の診療所の問題は想像以上に根深い」と指摘した。

 一方、人口 20 万人以上などに該当する「地方都市」では、「40 歳以上女性」と「40 歳以上男性」が増えたが、40 歳未満の医師は男女とも減少した。

 人口 100 万人以上などの「大都市」では、「40 歳以上女性」が 8 割超、「40 歳以上男性」はほぼ 2 割、「40 歳未満女性」は 1 割ほど増えた。「40 歳未満男性」は 04-12 年に 2 割超減少したものの、その後は増加に転じた。

 高橋構成員は「(大都市で)若い医師が意外に増えていない」「若い層を含めて開業は進んでいない」などと述べる一方、統計のベースになる住所や従事場所などの届け出を行っていない医師が、大都市に多い可能性も指摘した。

医療経営Q&A

医療法人役員などの損害賠償責任

Q.医療法人役員などの損害賠償責任について、解説してください。

従来は、理事、監事、評議員は、民法の一般原則により医療法人や第三者に対して賠償責任を負っていました。しかし、民法の一般原則だけで医療法人の利益保護のために十分ではないこと、また業務執行を担っている理事の責任の大きさから医療法が改正され、一般社団法人等と同様に役員等の損害賠償責任が医療法に明確に規定されました。

医療法人に対する損害賠償責任及び減免制度

①損害賠償責任

 医療法人の役員等は、医療法人に対して善管注意義務・忠実義務を負っていることから、その任務を怠ったこと等により医療法人に損害が生じた場合には、医療法人に対して損害を賠償しなければならなりません。

 ②減免制度

 医療法人に対する役員等の責任をあまり厳しく問いすぎると、経営リスクを極端におそれて消極的な意思決定しか行わない等、医療法人の利益を損なう可能性があります。また、役員等となるべき人材の確保が困難になるおそれもあることから、役員などの責任を免除する制度が設けられています。

第三者に対する責任

役員等は、その職務について悪意または重大な過失があり、第三者に損害が生じた場合には、第三者に対して損害を賠償しなければなりません。

また、理事は、計算書類に虚偽の記載等があり、注意を怠らなかったことを証明できない場合にも、同様の責任を負います。なお、医療法人に対する責任と異なり、第三者に対する責任の減免制度はありません。

社員による代表訴訟

①概要

医療法人と役員等の馴れ合いの関係により、医療法人の役員等への責任追及を期待できない場合があります。そのため、社員は代表訴訟の制度により、医療法人に代わって役員等への責任追及をすることができます。

 ②手続

 まず、社員は医療法人に対して役員等の責任を追及する訴えを提起するよう請求できます。そして、医療法人が請求の日から60日以内に責任追及の訴えを提起しない場合には、社員は医療法人のために、役員等へ責任追及の訴えを提起することができます。

 ③連帯債務者

 役員等が医療法人または第三者に生じた損害を賠償する責任を負い、他の役員等もその損害を賠償する責任を負うことになった場合には、同時に連帯債務者となります。

社員総会・理事会の仕組み

Q.社員総会・理事会の仕組みについて教えてください。

社員総会は社員によって構成される合議体で、社団医療法人における最高意思決定機関です。社団医療法人は、「社員総会」と「理事会」、また財団医療法人は「理事会」と「評議員会」の2つがあります。

社員総会・理事会の仕組み

 社員総会においては、株式会社等のような資本多数決の原理はとられておらず、社員は出資持分の有無や額等に関わりなく、1人1個の議決権を有します。理事会は理事によって構成される合議体です。  理事会では、医療法人の業務執行の決定や理事の職務の執行の監督、理事長の選出及び解職を行います。

会議の概要(社団医療法人)

 社団たる医療法人は意志決定等のための機関として社員総会と理事会を置かなければならないとされています。社員総会は法人の事業計画などを審議するため定時または臨時に開催される意志決定機関であり、理事会は社員総会の意志決定を受け法人事務を執行する機関であるといえます。

社員総会

少なくとも毎年1回、定時社員総会を開催しなければならないとされていますが、実務的には、以下を行うため、毎年2回は定時社員総会を開催する必要があります。

 ①事業年度開始前に事業計画を審議・決定

 ②事業年度終了後に決算等を審議・決定

 また、適切な議事を行うための社員の人数については、議長と特別の利害関係を有する社員は議決に加わることができないこともあり、議長1名、審議する社員2名として3名以上の社員が必要です。

理事会

 理事長は医療法人の業務を執行し、3か月に1回以上、自己の職務の執行状況を理事会に報告しなければならないとされているため、年4回は開催し、理事だけでなく監事も出席する必要があります。(開催数は、定款で毎事業年度に四か月を超える間隔で2回以上その報告をしなければならない旨定める場合も可~年2回以上開催する計算となります。)また、適切な議事を行うための理事の人数については、特別の利害関係を有する理事は議決に加わることができないこともあり、議長1名、審議する理事2名として3名以上の理事が必要です。

評議員会

評議員会とは複数の評議員で構成され、医療法人の業務若しくは財産の状況または役員の業務執行の状況について、役員に対して意見を述べたり、その諮問に答えたり、役員から報告を徴する機関です。

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