日本病院会など 3 団体は 18 日、「病院経営定期調査」の最終報告(概要版)を公表した。
回答があった 967 病院の 2023 年度の経常利益率は 100 床当たりマイナス 1.3%で、前年度のプラス 4.9%から赤字に転落した。
3 団体の経営調査では、近年は増収減益の傾向が続いていたが、24 年度は減収減益の傾向に転じることも想定されると指摘した。
1,215 病院による 24 年 6 月の外来診療収益が前年同月から 1 病院当たり 4.94%減った上に、入院診療収益の増加がプラス 0.51%と小幅にとどまったため。
3 団体は、診療報酬改定の影響と合わせて病院経営はさらに厳しさを増し、「病院運営の大き
な転換点を迎えた」としている。
調査結果によると、967 病院の 23 年度の医業収支(100 床当たり)は、収益が前年度から 2.8%、費用は 2.5%ともに増え、赤字幅がわずかに縮小した。
一方、新型コロナウイルス関連の補助金など医業外収益は 45.0%と大幅に減少し、経常損益は 22 年度の 1 億 3,344 万円の黒字から 3,722 万円の赤字に転落した。
医業費用 2.5%増の内訳は材料費 6.1%、設備関係費 2.5%、委託費 2.2%、給与費 1.3%のいずれも増。これに対し、ガス料金は 21.7%、水道光熱費は 11.4%いずれも減少し、経費全体では 3.4%減った。人材確保のため紹介会社に支払う紹介手数料・委託料は 100 床当たり 373 万円で前年度から 61.5%増えた。
●赤字病院は53% 経常利益ベース
医業収支ベースでの赤字割合は 967 病院の 74.9%で前年度の 74.8%からわずかに増えた。
一方、経常利益ベースでは 23 年度は 53.4%が赤字で、前年度の 23.0%から大幅に上昇した。
新型コロナ関連の補助金を除くと23 年度には 967 病院の 62.9%(前年度は 65.3%)が経常収支ベースで赤字だった。
調査は、日病のほか全日本病院協会、日本医療法人協会が合同で実施。
3 団体に加盟する計 4,443 病院のうち 1,242 病院から有効回答があった(有効回答率 30.0%)。
福岡資麿厚生労働相は 19 日の閣議後の記者会見で、マイナンバーカードと健康保険証が一体 化した「マイナ保険証」について 12 月時点での利用率の目標を設定していないことを明らかに した。利用促進に向けて、国民の不安解消の取り組みを引き続き進める考えも示した。
現行の健康保険証の新規発行を終了し、マイナ保険証に原則一本化させる 12 月 2 日まで残り 1 カ月を切っているが、マイナ保険証の利用は進んでいない。
厚労省によると、全国ベースでの利用実績は 9 月時点で 2,715 万件、利用率は 13.87%に とどまっている。マイナ保険証の利用率は、オンライン資格確認システムの利用件数に占めるマイナ保険証の利用件数の割合。
施設類型ごとに見ると、病院が 24.10%で最も高く、次いで歯科診療所 19.41%、薬局 13.70%、医科診療所 11.50%という状況だ。
福岡厚労相は会見で、「さらなる利用促進の取り組みが必要」だと説明。その上で、薬剤情報の リアルタイムでの共有が可能になるなどのメリットを実感してもらえるよう、国民の不安解消に 向けた取り組みを引き続き進めていく考えを示した。
マイナ保険証の利用率については、10 月 31 日に開かれた社会保障審議会の医療保険部で、 佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)が「厚労省から、保険者における利用率の目標設 定の参考として『11 月末に 50%を基本』と示されている」とした上で、現状の利用率と乖離 があることを指摘していた。
厚生労働省によると、医療機関や薬局全体での電子処方箋の導入率は 10 日現在 18.9%で、10 月 20 日の 17.4%から 1.5 ポイント上昇した。医療機関のうち病院の導入率は 2.7%で、10 月 20 日の 2.3%からプラス 0.4 ポイントにとどまった。
ほかは医科診療所の導入率が 7.0%(10 月 20 日からプラス 1.0 ポイント)、歯科診療所は0.8%(プラス 0.3 ポイント)。これに対し、薬局は 55.6%(プラス 3.6 ポイント)と突出して
いる。
電子処方箋の導入率は、マイナ保険証の利用に対応済みの医療機関や薬局のうち、電子処方箋
の発行や電子処方箋に基づく調剤が可能になる「運用開始日」を「医療機関等向けポータルサイ
ト」で登録した割合。
政府は、マイナ保険証の利用に対応済みの病院・診療所・薬局のおおむね全てに、2025 年 3
月までに電子処方箋を普及させることを目指すとしている。
厚労省によると 10 日現在、マイナ保険証の利用に対応できる 7,981 病院のうち、電子処方箋の運用開始日を登録しているのは 218 病院にとどまった。
一方、電子処方箋システムの利用申請をポータルサイトで行っている医療機関や薬局は計 9 万
3,050 カ所で、10 月 20 日の 9 万 883 カ所から 2,167 カ所(2.4%)増えた。
診療報酬請求業務の改善
Q.診療報酬請求業務の改善には、どのように取組めばよいのでしょうか。
基本方針として掲げられている項目は次のようなものです。
診療報酬請求業務における返戻等は、担当者の能力に原因がある場合が大部分を占めているのが現状です。よって、改善には担当者のスキルアップが最も有効です。知識・認識の不足を補うためのポイントは次のとおりです。
①請求事務知識と医療現場知識を習得する
医事課職員 … 診療報酬請求事務知識及び医療現場基礎知識の習得
診療部門 … 診療報酬請求事務手続、構造、用語の理解
②院内コミュニケーションを図る
診療行為、薬品及び治療材料の知識習得のため、診療現場に頻繁に足を運び医事(算定項目)と診療現場(診療行為)のギャップを埋める
③点数算定知識の向上を図る
院内研修会の実施、及び診療報酬管理委員会の設置による定期的な研修機会の提供、情報交換の実施
また、記載の不備を解消するための取り組みとして、次のようなものがあげられます。
①診療行為の発生源は医師であると再認識する(医師法施行規則第23条(診療録の記載に関する事項)
●患者の病名及び主要症状 ⇒ 診療報酬上は、傷病名及び傷病名の転帰の日付等
●治療方法(検査、処方及び処置)⇒ 診療報酬上は、指導記録や各診療行為の指示と実施の記録等
●診療の年月日 ⇒ 診療報酬上は、初再診の区分、休日・時間外の受診時間等
②マニュアル化・記載要領等の作成
記載漏れの頻度の高い項目に関して標準化を図る
(特定疾患指導料、退院時指導料、レセプト症状詳記等)
③カルテ・伝票様式の改善
カルテ様式の検討ポイント
●指示と実施の相関関係が、明確に判断できる様式
伝票様式の検討ポイント
● 色 :他伝票類との区別が容易なもの
●種 類:継続行為と単日行為等
●配 列:頻度の高いものを見やすい位置に配列
●相関関係:一連の行為やパターン化しているものは、同一枠内に配置
●複写枚数:使用目的ごとに各関係部門相当枚数の複写
支出予算制度運用のポイント
Q.社員総会・理事会の仕組みについて教えてください。
支出における予算制度では、変動性予算と固定性予算に分けて考えます。
院内で支出予算制を実施して経営健全化を図ることは、現在の医業経営環境においては不可欠です。
そして、この支出予算は、固定しなければならない予算と、流動的に緩和できる予算とに分けて管理することが重要です。
固定性予算
●人件費 ●経費(事務用品、通信費、印刷費、研修費)
●高額医療機器 ●消耗備品(日用品)
流動性予算
●医薬品費 ●特定医薬材料費
●診療材料 ●検査試薬
■人員増の試算例 ~考慮すべき要素
医師の場合
●保険診療入院単価アップの額 ●新入院患者数 ●平均在院日数
●紹介患者数(逆紹介患者数) ●手術・検査内容と件数
看護師の場合
●看護配置(算定・加算)による増収 ●新しい病棟計画による増収
収入から支出を引いたものが利益です。しかし、利益はおのずと生ずるわけではなく、医療機関の努力で生み出すものですから、利益を増やすためには、「収入増加のための活動」と「支出削減のための活動」の双方を継続して進めることが必要です。
これらの実践である利益を生み出すために必要な支出管理に向けて、支出を収入との関わりから3つに分けて整理すると、それぞれ適切な管理手法は次のようになります。
①収支に関わらず、一定額が支出されるもの:賃借料、職員の給与等
⇒ 一定期間固定的に支出される性格を持つため、この削減には施設・設備や人員等支出の対象物を変える要素が大きく、管理活動が必要
②収入と直接関係ないが支出額が変動するもの:電話代・消耗品費等
⇒ 支出実績を下げることが基本となり、削減目標を設定した引下げ努力が必要
③収入と比例関係のある支出:仕入・販促費等
⇒ 利益率の維持・向上の側面からの取り組みが必要
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