厚生労働省は 6 日、新たな地域医療構想の運用を 2027 年度から順次始める内容の取りま とめ案を省内の検討会に示し、大筋で了承された。
従来の病床機能に加え、「急性期拠点機能」など医療機関機能の毎年の報告を新たに求め、そ れに着目した連携・再編・集約化の協議を地域で 28 年度までに進める。
厚労省の取りまとめ案では、新たな地域医療構想を医療計画の上位概念と位置付け、医療計 画を地域医療構想の実行計画と整理した。新たな地域医療構想は都道府県が 26 年度に作り、 27 年度から順次運用を始める。そのため、現在の地域医療構想は 26 年度も継続する。それに向けて、国は新たな地域医療構想の策定・推進のガイドラインを 25 年度に策定する。
都道府県は、医療機関から報告されたデータなどを踏まえ、「かかりつけ医機能」や在宅・介 護連携・人材確保などを含む医療提供体制全体の方向性を 26 年度に打ち出す。また、病床機 能の区分ごとに必要病床数の推計も行う。
都道府県への報告を新たに求める医療機関機能は、地域ごとに整備する以下の 4 つ(いずれ も名称は案)と、広域の観点で整備する「医育および広域診療機能」。厚労省は、医療機関が地 域ごとの 4 つの機能を複数報告することもあり得るとしている。
医療法改正を含めて整備し、できるだけ早期の報告開始を目指す。
▼高齢者救急・地域急性期機能 ▼在宅医療等連携機能 ▼急性期拠点機能 ▼専門等機能
「高齢者救急・地域急性期機能」は、高齢者らの救急搬送を受け入れ、リハビリテーション・ 退院調整などを入院早期から行い、早期の退院につなげる。
また地域の施設などと連携し、通所や訪問などでの退院後のリハビリを確保する。厚労省は 当初、「高齢者救急等機能」を提案したが、分かりにくさを指摘する意見が相次ぎ、修正した。 ただ、“4 プラス 1”の枠組みは維持した。
「急性期拠点機能」の報告には、医療の地域シェアなどの「一定の水準」を設定し、手術や 救急など医療資源を多く使う症例は集約する。都道府県は、患者のアクセスや構想区域の規模 に配慮して、どの程度の数を確保するか構想区域ごとに設定する。
「高齢者救急・地域急性期機能」や「在宅医療等連携機能」を報告する医療機関の「一定の 幅」も地域の実情に応じて設定し、報告が実態に合わない場合は都道府県が医療機関に報告の 見直しを求められるようにする。
医療機関機能に着目した連携・再編・集約化の協議は地域ごとに 28 年度までに進める。一 定の水準などの詳しい設定方法は法改正後に議論し、ガイドラインに盛り込む。
厚生労働省は 10 日、医師偏在対策の取りまとめ案を省内の検討会に示し、了承された。
規制的手法と経済的インセンティブなどを組み合わせた内容で、規制的な手法では、医師が 特に過剰な「外来医師過多区域」での新規開業への規制を強化する。
厚労省は当初、在宅など地域に不足する医療の提供を診療所に都道府県が要請や勧告を行い、 開業後、それに従わない場合は指定を見合わせたり取り消したりすることを想定していた。
しかし、日本医師会が強く反対したため、憲法上の職業選択の自由や営業の自由に抵触する 恐れがあり「認める余地はない」などの慎重論を併記した。
その上で取りまとめ案では、都道府県の要請を受けた診療所の指定期間を本来の 6 年から 3 年に短縮したり、勧告に従わない医療機関名や理由を公表したりする対応を盛り込んだ。
そうした医療機関への「診療報酬上の対応」や、補助金の不交付などを行うことが考えられ るとしている。それらの対策の効果を、施行 5 年後をめどに検証し、十分に効果がなければさ らなる対策を検討する。
また、規制的手法の一環で、「医師少数区域」などでの勤務経験を管理者(院長)の要件にす る医療機関を、現在の地域医療支援病院から公立病院や公的医療機関、国立病院機構・地域医 療機能推進機構・労働者健康安全機構の病院に広げる。
一方、経済的なインセンティブでは、偏在対策の重点支援が必要な「重点医師偏在対策支援 区域」の医療機関に派遣される医師への手当の増額を支援する。さらに、中核病院など医師の 派遣元の医療機関も支援する。
重点医師偏在対策支援区域の医師への手当を増額するための財源は、全ての被保険者で広く 負担するため、医療保険者からの拠出でカバーすることを提案した。ただ、医師偏在対策のた めの財源を保険者の拠出に求めることには合理性がないなどそれへの意見も盛り込んだ。
厚労省は、年内にまとめる医師偏在対策のパッケージに具体策を反映させる。
経済的なインセンティブ のうち、医師の偏在を是正 するための診療報酬の対応 は、26 年度以降の診療報酬 改定に向けて中央社会保険 医療協議会でさらに検討す る。そのため、対策パッケー ジには盛り込まれない見通し。
厚生労働省は、介護サービス情報公表制度で項目として加わった「財務状況が分かる書類」の報告について、やむを得ない場合には事業所単位と法人単位が混在しても差し支えないとする解釈を示した。事業所単位で作成している書類と、法人単位でしか作成していない書類があるケースを想定している。
厚労省はまた、会計基準規定でキャッシュフロー計算書の作成が求められていない事業所ではキャッシュフロー計算書を報告する必要はないとしている。
情報公表制度に関するQ&Aとして、都道府県などに周知した。
介護サービス情報公表制度では、利用者が介護サービスや事業所・施設を比較・検討して適切に選ぶための情報を都道府県が公表する。事業所は提供する介護サービスの種類や職種別職員数、利用定員、送迎の有無などの情報を都道府県に毎年報告する必要がある。
介護保険法施行規則の一部が 4 月に改正され、情報公表制度での介護事業者が報告すべき項目に、財務諸表や計算書類など財務状況が分かる書類が追加された。
報告する財務状況が分かる書類は、原則として直近の事業年度を終えた時点で作成した損益計算書や貸借対照表(バランスシート)、資金収支計算書(キャッシュフロー計算書)。
ただ、会計基準上、求められていないなど事情がある場合には資産や負債、収支の内容が分かる簡易な計算書類でも差し支えない。
また、報告は事業所・施設単位で行うこととするが、事業所・施設単位で会計処理を行って いないなど、やむを得ない場合には法人単位で公表してもよい。
職員教育・研修の充実
Q.リスクマネジメントを念頭に置いた職員教育について教えてください。
「判断の誤り」、「技術・手技の未熟」、「知識不足」については、教育・研修体制の充実が求められます。例えば、看護師のスキルアップの場合、個々に経験年数やスキルの棚卸を行い、それぞれの看護師のレベルに適当なプログラムによる教育体制の確立が重要です。例えば、産休や育児休業で相当期間休職していた看護師については、個別プログラムとして新しい医療材料や医療機器の使用手順に関する研修を実施するなど、個人ごとのレベルやスキルを的確に把握し、対応することが求められます。
近年では、認定看護師や専門領域看護師などを教育・育成プログラムに専任で配属し、より細かなフォローアップ体制を築いている病院もみられます。
さらに、教育体制においては、目標管理制度と併用して進めると、本人にも自身の強み・弱みがわかりやすく、達成度合いを評価できることから、より有効に活用できる場合もあります。
Q.病院における医療安全管理体制について有効な方法を教えてください。
■病院においては「病院機能評価」の受審が有効
第三者評価である病院機能評価の受審に向けた院内全体での活動は、安全対策実施状況のチェックに有効な方法のひとつです。
病院機能評価における「安全管理体制」に関する評価は、主に医療安全対策委員会の実効性が評価の対象となっています。具体的には、委員会としての活動のあり方を通じて、医療安全意識が病院全体に浸透する体制が構築されているか、さらに院内の安全管理情報(ヒヤリ・ハット、インシデント・アクシデント報告)を収集し、その分析を踏まえて改善策の検討がなされる仕組みが確立されているか、という2点がポイントになっています。
このような点と特徴から、医療安全管理体制を総合的に評価する体系を持ち合わせた機能評価は、リスクマネジメント体制の精度向上に非常に有効なツールだといえます。
しかし、医療安全管理対策は全院的に取り組むべき課題とされながらも、その委員会活動は中小規模の医療機関においては限界があるため、各部門・部署での安全管理体制の確立が重要事項となってきます。同時に、安全管理体制を一定のレベル以上に保つための監査機能を働かせていくことが重要です。
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